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2015年10月26日

第2話の1:バツイチ黒豹は飢えていた

黒ヒョウというのは、タイ人にありがちの全身浅黒くて、引き締まった肢体の女のことだ。はしこくて、なかなか言うことを聞かないが、それだけに、征服したときの味は格別だ。

その黒ヒョウと出会ったのは、バンコクのナナ・プラザというゴーゴーバー集合ビルの、とある小さな店だった。
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そこはウナギの寝床のように奥に細長い店で、中央に細長いステージがあり、客は両側の壁にへばりつくようにして踊りを見物するという作りだった。

小さい店なので踊り子の数も少なく、たしか5人ずつ2組で踊っていたから、総数10人程度だったのだろう。

その中で、ひときわ目を引く踊りをする子がいた。

若くもないし、色も黒いし、美人でもないのだが、均整のとれたいい体が、ハイヒールサンダルでさらに引き締まり、その姿で気合の入った踊りをする子だった。

興が乗ってくると頭をブンブン振り回して、長い髪の毛が逆立って、ライオンのタテガミのようになるのだった。

あんないい踊りをするのに、自分からは何もアピールしてこない、控えめな子だった。

しばらく、その子の踊り目当てでその店に毎日のように通った。

その子自体に興味があるのではなく、純粋にその子の踊りを見たいだけなので、呼んで話をしたり、ドリンクをおごったりすることはなかった。

気合の入った踊りを見て、満足したら帰るというだけだ。

(CMのあと後半に続く)




ところがある日行ったら、別人のように気が抜けている。

今日はどうしたんだろうと注目していたら、動きが次第に緩慢になり、最後は引き締まった臀部をこっちに向けて、ポールに寄りかかり、ギリシャ彫刻のように固まってしまった。

具合でも悪いのかと、その子を呼んで、横に座らせて聞いてみた。

オンというその子は

「疲れた。毎日踊ってると疲れるし」

「いつもはすごい踊りなのに、今日は全然ダメじゃないか」

「フフッ」

笑いにも力が入ってないので、相当疲れているようだ。

「酒でも飲んだら疲れが取れるかな」

一杯おごってやった。

それを機会に、来る度におごってやる仲になった。

その頃は、色は黒いし鼻ペシャだし、いい体はしていても、とても食指は動かなかったのだが・・・。


続く
タグ:ナナプラザ

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2015年10月30日

第2話の2:黒豹の身の上話

前回からの続き)

元気ないのを見かねて一杯おごってやったのをきっかけに、黒ヒョウと仲良くなっていった。

来る度に席に呼んでドリンクをおごってやった。黒ヒョウは飲みながら、ポツリポツリと身の上話をしてくれるようになった。

田舎に子供がいて、実家に預けてバンコクに出稼ぎに来ていること。

旦那とは離婚したという。タイではよくあるパターンだ。

タイ男は基本怠け者なので、なるべく女房に働かせて、自分は遊んで暮らそうという、とんでもない奴らだ。

女房に金をせびり、くれないと暴力を振るう。女は、最後は泣く泣く子供抱えて別れるしかない。

女手一つで食っていくためには、田舎では仕事もなく、バンコクやパタヤを目指す。

容姿端麗なら、バーで外国人の男を相手にすることになる。

いくら若くても、タイのバーで働いている子は、みんな子持ちだと考えて間違いはない。

若ければ若いほど、悪い虫もつきやすいからだ。

タイでは、16、7で男が出来るのは普通なのだ。

オンはいい体しているが、顔が今ひとつだったので、虫がつくのはそれほど早くはなかったのだろう。

若くはないが、それでも子供を養うため、全財産をカバン一つに詰めて、バンコクに流れてきた一人だった。

(CMのあと後半に続く)



あれはソンクラーン(タイの水かけ祭り)の季節だった。熱帯のタイでも、1年で一番、猛烈に暑くなる4月だ。

その暑さをまぎらすためなのか、誰に水をかけても許されるという、伝統的な無礼講の祭りがある。それがソンクラーンだ。

バンコクも例外でない。外を歩いていると、どこから水が飛んで来るかわからない。

水鉄砲でチュッという生易しいものならいいが、柄杓や、時にはバケツで水が飛んで来るのだ。

バケツでやられたら、もちろん時計からケータイから、全身びしょぬれになる。戦々恐々として過ごさないといけない数日間だ。

その日はビクビクしながら、急ぎ足で雑踏を通りぬけ、ナナプラザに向かった。途中の被害は、1回だけコップで背中にかけられただけですんだ。

そうやってオンの店に入り、ホッと一息ついた。

店の中では水かけはやらないという不文律があるので、もう安心だ。

すると、邪悪な物が目に入った。

背負タンク式の本格的な水鉄砲が隅に置いてある。


続く
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2015年11月10日

第2話の3:黒豹は気立てのいい奴だった

(前回からの続き)

背負タンク式の本格的な水鉄砲を目にして、今日も席についてくれたオンに、まさか店内で水かけやるんじゃないだろうなと、こわごわ聞くと、

「私のよ。子供に買っておいたの」

「今ソンクラーンで学校休みだから、ローイエットから両親と子供が来るの」

すっかり母親の顔になって、ドヤ顔で説明するオンがいた。


だがいつの間にか、オンの水鉄砲を勝手に背負って、水をかけて回っている奴がいる。

この店一番の売れっ子のチムだ。

こいつは性格は悪いのだが、若いし顔がいいので、しょっちゅう客に連れ出されている。そのせいで、店で一番デカイ顔をしているのだ。

私のことも日本人と知ってからは、いつも「ドレーモン!」(ドラエモンのこと)と呼んでからかうのだ。

(CMのあと後半に続く)



それはともかく、ソンクラーンでも、店の中では水かけはやらないという不文律がある。

冷房のギンギンに効いている店内で水をかけられても、寒いだけだし。

だが、チムは稼ぎがしらの地位をカサに着て、油断している客にこっそり水鉄砲を発射しては、キャハハと逃げ回っていた。

オンと話し込んでいる私の席にもいつの間にかやってきて、私のズボンにチュッと水をかけ、「キャーハハ」と逃げて行った。

別にそれくらい何ともなく、むしろ若い子に構ってもらって嬉しいくらいだったのだが、無反応でいるのも芸がないので、わざと

「コラッ!」

と怒ったふりをしてやった。

すると本気に取ったらしいオンは即座に立って、奥から乾いたタオルを持ってきて、ズボンを拭いてくれたのだった。

オンは年増だけあって、気の利く子だった。

自分の店の子があんなことをした責任を取るという意味と、純粋に困っている者の面倒を見るという、2つの気持ちの混じり合った態度だった。

こういう気立ての良さは、美人であろうがブスであろうが、気持ちを引きつけるものがある。

このあたりからだったようだ。

「オンも捨てたもんじゃないな」

と思いはじめたのは。


続く
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