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2015年12月02日

第2話の7:黒豹の部屋を訪ねて

これまでのあらすじ:

バンコク・ナナプラザの小さなバーで知り合った、色は黒いが引き締まった体の黒豹オン。部屋に来ていいという許可を取りつけたのだが、迎えには来てくれないので、見知らぬ町に一人で向かう。

(長い話です。その1からお読みください)

黒ヒョウに言われた通りバイタクに乗ったのだが、人や車にぶつかりそうになるたびに何度も肝を冷やして、

(バイタクはもうコリゴリだな。帰りはタクシーにしよう)

いろいろ考えていたら、あっけなくバイタクが止まった。どうやら着いたようだ。

横丁の標識を見ると、たしかにオンの言った横丁だ。

バンコクはどの横丁(ソーイ)の入り口にも、必ずポールの先に青色の横丁標識があって、通りの名前とソーイ番号が書いてある。知らない町では、それだけが唯一の頼りだ。

まだガクガクしている足と、震える手で料金を払う。

バイタクの姿が消えると、あたりは急に静かになった。

横丁の入口には古びた木造の倉庫のような建物が視界をさえぎり、人通りはない。

すでに日も暮れて暗くなり、山の中に一人で置き去りにされたような気分だ。

オンがいないと、ここで野垂れ死にするしかないのかもと弱気になる。

(CMのあと後半に続く)




ケータイを取り出し、

「着いたけど、これからどうすればいいの」

「奥まで歩いて来て、分かれ道を右。途中で会うから」

途中まで迎えに来てくれるようだ。

最悪の場合は、番地と部屋番号だけ告げられて、

「部屋まで自分で来い」

と言われるかとも思ったのだが、どうやらここまで来れば、本気度の試験には合格したということらしい。

これからは、それなりのちゃんとした扱いをしてくれるようだ。

だがまだオンだけが唯一の頼みの綱なので、電話は切らず、しゃべりながら歩く。

「まず右に曲がるんだよね」

「そう」

「ああ分かれ道があった。右に行くよ」

ソーイの入口は倉庫街だったが、奥に入ると家があり、明かりもあり、人の声も聞こえて、普通の町だ。

ようやく安心する。

「右に曲がったよ。そのまま歩いてる」

「あ、あなたが見える!」

何かの店の前らしい、そこだけ特に明るい場所で手を振っている女がいる。

私は目が悪いので顔はよく見えないが、どうやらオンらしい。

異国の知らない町で知り合いに会うとは、こんなに心強いことなのか。オンが仏様に見えた。


続く

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2015年12月05日

第2話の8:黒豹の部屋に入れてもらう

(長い話です。その1からお読みください)


近くで見る黒豹オンはいつものステージ衣装とは違って、ジーンズに白いTシャツの小ざっぱりした格好だった。

長い髪を後ろで大ざっぱに束ねて、全体に店とは違う印象だが、引き締まった体の輪郭は同じだ。

ぴったりしたジーンズが、出っぱった部分も引っ込んだ部分も、輪郭の線をはっきり見せつけている。

女の部分に突き刺さるような私の視線を目ざとく感じて、

「あれがあたしのマンション」

オンの指先で無理やり視線を変えられたその先に、白っぽい中層マンションが見えた。

タイのマンションはピンからキリまであり、ガードマンが入り口で24時間目を光らせている高級マンションもあれば、出入り自由の一般マンションもある。

オンのマンションはエアコンなしで家賃が安いと言っていたから、一般マンションでもさらに下のクラスだ。


並んで歩きながら、

「今友だちが来てるから、晩ごはん一緒に作って食べよう」

えええ〜?友だちイイイ〜?

そんなの聞いてねえよォ〜

そんな邪魔者がいたら、言いたいことも言えないし、やりたいことも出来ないし。

もしかして、まだまだ本気度の試験は終わってないのか。友だちに恐れをなして、帰るなら帰れってか?

それとも最初から、文字通り「部屋に来るだけ」だから、飯食ったら帰れという意味か。

やれやれ、一難去ってまた一難か。女の攻略は難しいものだ。
(CMのあと後半に続く)




オンのマンションは、聞いていた通りの安賃貸マンションだった。

ガードマンはいないので、誰でも出入り自由だ。

エレベーターを降りると、通路は雑然としていて、タイの習慣なのか、靴やサンダルがバラバラに、部屋の前に脱ぎ散らかしてある。


オンの部屋は、入ったところが、だだっ広い一部屋になっていた。

壁際にダブルのベッドがドンと置いてあり、地味な布団が敷いてある。あとは僅かな家具だけの、質素な生活ぶりだ。

奥に台所とトイレらしい部屋が見える。いわゆるワンルーム・マンションだ。今ではスタジオタイプと言うらしいが。

日本のワンルームと違うのは、部屋が広いこと。

日本だったら2部屋にするだろうスペースを、だだっ広い一部屋にしてある。さすが大陸のタイは、住環境も太っ腹だ。

広い部屋で女の子が一人、テレビを見ながら待っていた。


続く

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2015年12月08日

第2話の9:黒豹の部屋にいたのは

(長い話です。その1からお読みください)

黒豹オンの部屋で一人待っていた子は、オンと同郷で、名前はメイ。やっぱりどこかのバーで働いていると言う。

ホットパンツから伸びる褐色の足は、タイ人女性特有のスラリとした長い足だ。

その長い足を持て余すかのように床の上に横座りしているので、いやでも目に入る。

だが顔は、目のくるくる回るひょうきんな顔で、私の好みではない。


夕食の材料は、近くの市場にこれから2人で買いに行くという。

冷蔵庫がないので、食料の買い置きはまったくしないらしい。

「冷蔵庫は欲しいけど、ノーマネーだから」

「あなた、あたしに冷蔵庫買ってよ」

いきなり、冗談めかしておねだりをしてくる。やっぱり黒ヒョウだ、油断できない。

ここで

「ああ、いいよ」

とでも安請け合いしようものなら、要求は冷蔵庫だけではすまなくなる。

次はエアコンないからエアコン、買い物に必要だからバイク、挙句の果てには、田舎の親が病気だから治療費、兄弟が交通事故で入院費と、止めどがなくなるのだ。

そうやってタイ女に身ぐるみ剥がされた日本人男を何人も知っている。だが私はそんな甘ちゃんではない。

「安いなら買ってもいいけど」

言質を取られないよう、なんとかその場を切り抜ける。
(CMのあと後半に続く)




冷蔵庫がないのはいいが、客が来るとわかっているのだから、今日だけでも買って用意しておけばよさそうなものだ。

客の顔を見てから買いに行くところは、やはりタイなのだろう。

それとも私の本気度がまだ未知数だったから、来ない方にも賭けてあったのか。

沢山買い込んでいて、もし私が口先だけで来なかったら、冷蔵庫はないので、タイの気温ではすぐ腐ってしまう。

そこまで考えていた可能性も、なきにしもあらずだ。


だがまてよ、さっきは食材を「2人で買いに行く」と言ってたな。

ということは、私は黒ヒョウの部屋で一人で留守番するのか?


続く
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