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2015年11月30日

第2話の6:黒豹の与える試練

(長い話です。その1からお読みください)

黒ヒョウの住む町の駅に着いたはいいが、電話をしても、迎えに来てくれる雰囲気はどこにもない。

「来るなら来い、来ないなら来るな」ということらしい。

もしかして、こっちの本気度を試しているのか。

本気だったら、万難を排しても来るだろうし、ただの遊びなら、途中で諦めて帰るだろうからと。

女心はなかなか難しいものだ。

とにかく、どの出口でもいいというから、仰せの通り、適当な出口に出る。

高架駅の階段を降りると、高架電車のゴツい灰色の構造物に空を遮蔽された、さびれた郊外の町だ。

店も少なく、人通りもまばらだし、車も、だだっ広い道をビュンビュン走っている。

もう夕方だし、こんなわびしいところで一人ぼっちになったら、オンだけが頼りだ。

「駅を出たけど、どうするの」

「バイクタクシーに乗って。行き先はサパーンタクシン・ソーイ21」

電話の向こうで指示するオンの声が頼もしい。

(CMのあと後半に続く)

バイクタクシーというのは、バンコクの街角で客待ちしているバイクに金を払って、2ケツで連れて行ってもらうもので、まあ手軽なタクシーのようなものだ。

皆オレンジのチョッキを着ているので、バイクがあれば誰でもできるわけではなくて、登録制になっているようだ。

「ソーイ21」というのは「21番横丁」という意味で、住所表記の一部だ。

バイクの横に座り込んでボンヤリしているバイタクの兄ちゃんを呼んで、行き先を告げる。

バイタクは英語がまったく通じない運ちゃんもいるのだが、幸いに行き先は理解してくれた。

後ろにまたがると、大通りに出て、いきなり走りだす。車の混んでいるところでは、車と車の狭い隙間をビュウビュウ走り抜ける。

次はなぜか歩道に上がり込み、歩道の中を走りだす。

人の多いところでは、人と人の隙間をたくみにうねって通り抜ける。

普通に足を広げていると膝を人にぶつけそうなので、出来るだけ足を閉じる。

それでもバイクごと人にぶつかったらどうするんだとヒヤヒヤして、生きた心地がしない。

これももしかして、黒ヒョウが私に与えた試練の一つなのか。


続く



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