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2015年11月10日

第2話の3:黒豹は気立てのいい奴だった

(前回からの続き)

背負タンク式の本格的な水鉄砲を目にして、今日も席についてくれたオンに、まさか店内で水かけやるんじゃないだろうなと、こわごわ聞くと、

「私のよ。子供に買っておいたの」

「今ソンクラーンで学校休みだから、ローイエットから両親と子供が来るの」

すっかり母親の顔になって、ドヤ顔で説明するオンがいた。


だがいつの間にか、オンの水鉄砲を勝手に背負って、水をかけて回っている奴がいる。

この店一番の売れっ子のチムだ。

こいつは性格は悪いのだが、若いし顔がいいので、しょっちゅう客に連れ出されている。そのせいで、店で一番デカイ顔をしているのだ。

私のことも日本人と知ってからは、いつも「ドレーモン!」(ドラエモンのこと)と呼んでからかうのだ。

(CMのあと後半に続く)



それはともかく、ソンクラーンでも、店の中では水かけはやらないという不文律がある。

冷房のギンギンに効いている店内で水をかけられても、寒いだけだし。

だが、チムは稼ぎがしらの地位をカサに着て、油断している客にこっそり水鉄砲を発射しては、キャハハと逃げ回っていた。

オンと話し込んでいる私の席にもいつの間にかやってきて、私のズボンにチュッと水をかけ、「キャーハハ」と逃げて行った。

別にそれくらい何ともなく、むしろ若い子に構ってもらって嬉しいくらいだったのだが、無反応でいるのも芸がないので、わざと

「コラッ!」

と怒ったふりをしてやった。

すると本気に取ったらしいオンは即座に立って、奥から乾いたタオルを持ってきて、ズボンを拭いてくれたのだった。

オンは年増だけあって、気の利く子だった。

自分の店の子があんなことをした責任を取るという意味と、純粋に困っている者の面倒を見るという、2つの気持ちの混じり合った態度だった。

こういう気立ての良さは、美人であろうがブスであろうが、気持ちを引きつけるものがある。

このあたりからだったようだ。

「オンも捨てたもんじゃないな」

と思いはじめたのは。


続く
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2015年11月20日

第2話の4:黒豹を手懐けた

黒豹オンは、いつのまにか何をしてもOKになっていた。

普通の相手なら怒って威嚇のうなり声を出したり、反撃して噛み付いてくるようなイタズラでも、私ならそれ以上の危害は加えないとわかったのか、黙ってなすがままになっていた。

すっかり信頼されたのをいいことに、体のあちこちをブラッシングして、リンパマッサージをしてやったり、くすぐったりして、たっぷりイタズラを楽しんだものだった。

もちろんそういうときは、帰りに心づけを多めに置いて帰った。
(CMのあと後半に続く)



電話番号を聞き出したのもその頃だった。

バーで働く子に電話番号を聞くと、軽い子は初対面でも簡単に教えるが、身持ちの固い子は簡単には教えない。

必ず理由を聞いてくる。

ここでちゃんとした答をしないと、教えてくれないのた。

オンもそうだった。

私の答は

「日本から一人で来ていて、暇な時しゃべる相手がいないから」

これでOKだった。

多分、理由は何でもいいのだと思う。とにかく、

「私はそんなに軽い女ではない」

ということを言いたいのだ。

そうやって番号を教えてもらい、暇な時に電話で話をするようになった。

話といっても、「今なにしてる」とか、「今日出勤するのか」という、他愛無い話だが。

その中で、安いアパートに一人で住んでいることも聞き出した。これはいい情報だ。


続く
タグ:電話 女心

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2015年11月26日

第2話の5:黒豹の部屋に行きたい

(長い話です。その1からお読みください)

電話番号を聞き出して、さらに一人暮らしまで聞き出したら、次にやることは決まっている。

店で、

「休みの日に部屋に行ってもいい?」

と聞いてみた。

今度も電話番号のときと同様に、理由を聞かれるかと身構えたが、オンの返事はあっけなく、

「おいでよ!」

だった。

ええっ、こんなに簡単にOKしていいのか?

今度はこっちがどぎまぎする番だ。すっかりうろたえて、

「言っとくけど、遊びにいくだけだから」

聞かれてもいない弁解をはじめていた。

「誤解するなよ」

「俺はそんなに軽い男じゃないから」

さすがにこれには笑われたが、次の休みの日を聞き、しっかり約束を取り付けた。

(CMのあと後半に続く)




さてその日が来て、体をすみずみまで清め、オンの部屋に向かう。

場所はまったく知らないのだが、ケータイで聞きながら行けば、なんとかなるだろう。

電車の駅名は聞いていたので、まず電車に乗った。

バンコク市内を縦横に走る高架電車だ。

地下鉄と組み合わせれば、バンコクのたいていの場所には行けるようになっている。

電車は中心部に向かうので、混んでいた。混んだままバンコク中心部のサヤーム駅まで行き、別の路線に乗り換える。

やって来た電車はバンコクの周辺部に向かうので、スカスカだった。

繁華街を通りぬけ、チャオプラヤー川の広大な茶色の流れを一気に渡る。

聞いていた見知らぬ駅で電車を降りた。勝手がわからずウロウロ歩いていると、地元の客にどんどん追いぬかれる。

ウロウロしながら出口を探すと、この駅には出口が4つあるようだ。

全然違う方に出てもよくないので、オンに電話で聞くと、どの出口でもいいという。

日本的な感覚では一番近い出口を教えてくれるはずだが、ここはタイだ。

どこから出ても、(時間はかかるだろうが)いつかは必ず行けるのだから、そんなに細かいことは気にしないらしい。


続く
タグ:電話 電車

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